翌日 デート 1回目 (水)(7/1)
歌「……」ドキドキ
女「なにそわそわしてるの?」
歌「付き合うなんて初めてだからどうやってデートすればいいかわかんなくて…」
女「(ほんと面倒…)」
女「はぁ…」
歌「(え、た、ため息…?)」
女「(あ、やばいやばい。ちゃんと演技しなきゃ…)」
女「(バレてないのかな?)」
歌「……」
女「映画行こうよ。満員なっちゃう」
歌「そ、そうだな」
女「…………」
女「(でもあんまりベタベタしすぎると別れるタイミングが…)」
女「(そもそも、ベタベタなんかしたくもないけど)」
……
…
歌「何観ようか」
女「んーと」
歌「アクション、アニメ」
女「SF、コメディ」
歌「色々やってるな」
女「(別になんでもいいや)」
鑑賞中
歌「(よし、学園ラブコメでオッケーもらった)」
女「(学園ラブコメね)」
女「(キライじゃないけどなぁ…)」
女「(あ、好きな俳優でてる!)」
女「(これに出てたんだぁ…ふふ)」
女「(かっこいいなー)」
女「(テスト前でチェック甘くなってたのかも)」ニコニコ
女「(まぁ大して勉強してないんだけど)」
歌「(楽しそうにしてる。ほんとよかった)」
歌「(罰ゲームのデートで喜ぶなんて情けないけど)」
歌「(好きだから仕方ない)」
歌「ふひひ」
女「(なんか笑ってるし……好きな女優でもいたのかな?)」
……
…
歌「泣けたな」
女「そう?」
女「でもあの人出てたから満足」
歌「好きな俳優とかいたの?」
女「うん。あの浮気されちゃった先生」
歌「……………………」
女「?」
歌「そうなんだ。一期前の連ドラも出てたよな」
女「へー、知ってるの?」
歌「うん。ありゃ同性から見てもかっこいいよ」
女「わかってくれる人がいるとは…」
歌「今の感じもいいけど昔のコメディっぽい雰囲気の方も好きでさー」
女「あ、私も好き!」
一時間後
女「あ、そろそろ私帰らなきゃ」
歌「わかった。家まで送らせてくれる?」
女「……ううん。いいよ。大丈夫だから」
歌「そうか。じゃあ駅まで歩こうか」
女「あ、ちょっと待って。これ被んなきゃ」
歌「そんなの持ってきてたんだ」
女「好きなの」
歌「流行のキャップ女子ってやつか」
女「………………」
歌「…どした?」
女「(……そんなミーハーじゃないのに)」
女「……」
歌「(落ちつけ…どの言葉で地雷を踏んだかくらいわかるんだ…)」
歌「つ、次のデートで帽子買うから機嫌直してよ」
夜 歌麿宅
歌「ただいま」
妹「おかえり。ご飯できてるから」
歌「さんきゅー」
……
…
妹「次の約束もできたんだ」
歌「誘う時は緊張したけどな」
妹「作戦は成功した?」
歌「成功した、と思いたい」
歌「特に、JKさんをJKさんの着ぐるみを被った妹だと信じ込もう作戦はよかった」
妹「ふむ。じゃあ、行く予定の劇場で上映してる作品のキャストの情報丸暗記作戦は?」
歌「労力の割にリターンが少ないように思った」
妹「きっとそんなことないよ」
妹「緊張せず、会話も途切れず、次のデートの予定も組めたなら上出来」
歌「地雷踏まなきゃなぁ…」
妹「んー」
妹「本気で怒ってるわけじゃないと思うし」
妹「次のに繋げられたんなら良しとしよう」
歌「そう言ってもらえると安心」
……
…
妹「(さて、今日聞いた情報から作戦構築してかなきゃ)」
妹「(……兄さんは勉強できるからそれも使いたいんだよね)」
妹「…………」
妹「(いや、兄さんも…だよね)」
妹「(私も勉強はトップだし)」
妹「(……っていうかトップじゃないと困るんだ)」
妹「…………」
妹「(姉上に心配かけさせるのもよくないし)」
女宅
女「(あっさり次のデートの約束しちゃったなぁ)」
女「(……でもまぁいいよね)」
女「(はやく5回済むんならそれでも…)」
ピリリリ
女「(女友ちゃんからだ)」
ガチャ
女「もしもし」
女友「どーだった?」ニヤニヤ
女「いきなり何なの」
女友「だってだってデートしてきたんでしょ」
女「まぁ…」
女友「あ、あと言い忘れてたけど」
女「?」
女友「5回デートしなきゃ2週間経ってても交際続けなきゃダメだからね」
女「わかってる」
女友「それならいいんだけどさ」
女「……」
女友「でさ、感想は?」
女友「惚れちゃったりした?」
女「……何言ってるの?」
女友「もー」
女友「そんなに怖いと魅力半減しちゃうよ」
女「……私、デートの予定立てるのに忙しいから切るね」
女友「え、もしかしてもしかしてやっぱり惚れ」
女「おやすみ!」
ガチャッ
女「(告白したのが月曜日…)」
女「(金曜日に買い物。土日は一回デートしたいな)」
女「(それでやっと三回目が終わり……)」
女「(いっぱい予定詰めてデートして、すぐに振っても別に不自然じゃないよね…?)」
女「(今日も随分と眠たそうにしてたけど、何か理由あるのかな)」
女「うーん」
女「(まぁ関係ないし、はやく終わらせたい…)」
女「あ」
女「いいこと考えた。何回もデートするうちに友達としての気持ちの方が強い」
女「ってことに気が付いた……って理由ならなんとなくいけそうかも」
女「…………」
女「(今日のデート…)」
女「(4時間くらい一緒にいたけど特に何も思わなかった)」
女「…………ん?」
女「何も、思わなかった?」
女「(告白した時は、もっとおどおどしてたり)」
女「(びくびくしてる印象しかなかったような…)」
翌日 帰宅路 (木)(7/2)
歌「(今はひとりみたいだな……ってこれじゃストーカーだ)」スタスタ
歌「女友さん」
女友「!」
女友「お、歌麿君、偶然だね」
歌「ちょっといいかな」
女友「(まさか…)」
女友「どうしたの?」
歌「…………」キョロキョロ
歌「(誰もいないな)」
歌「ありがとう!」ガシッ
女友「!」
女友「手、手が…」
歌「俺うれしいよ」
女友「な、何が…とりあえず手離して…」
歌「あぁごめんごめん」
歌「ちょっとの間だけでも俺に夢を見させてくれてるから感謝したくて」
女友「(……もしかして)」
歌「こんなの取引条件になるか分かんないけどさ…」
歌「すっごい丁寧に勉強教えてテストの成績上げるから、頼む!」
歌「情報をください!」
女友「え、情報…?」
歌「ダメか?」
女友「え、そ、それって、その…」
歌「ん?もちろん罰ゲームの話だけど」
女友「(や、やっぱり)」
女友「ご、ごめんなさい!ほんと軽い気持ちでこんなことしちゃって」
歌「……………………」
歌「いいよいいよ、謝んなくても。さっきも言ったけど俺うれしくてさ…」
歌「……俺が前から好きってことがバレてるんなら」
歌「からかわれてるみたいでイヤだったけど」
女友「う、ううん。あの子はその事知らないみたいだから」
歌「そっか。よかった…」
歌「で、さっきの話だけどいいかな?」
女友「で、でも情報なんて私…」
女友「あ、いつまで、ば、罰ゲーム…するとか?」
歌「それも聞きたいけど」
歌「提案したのは誰なのか気になって」
女友「……」
歌「口止めされてる?」
女友「あ、いや、えっと…そんなことは…」
女友「……わ、私が、その…」
歌「罰ゲームはいつまで?」
女友「……わ、私が言ったのは2週間なんだけど」
歌「2週間…」
歌「条件というか……他の取り決めとかはある?」
女友「えっと…なんだったかな…」
歌「……どっかお店入ろうか?」
女友「い、いや結構です…!」
女友「あ、あの、デート回数は、さ、最低5回…って……決め、ました…」
歌「…………」
女友「…………」
歌「最低…」
女友「!」
歌「ん?」
女友「(あ、い、今のは復唱しただけか…)」
歌「一番重要なとこなんだけど」
女友「な、なに…?」
歌「2週間経ったら振る……みたいな取り決めは?」
女友「えっと…たしか、続けてもいいし振ってもいいって言ったと思う…思います…」
歌「…………」
女友「…………」
歌「JKさんが好きなことでも教えてもらおうかな」
女友「……う、うん」
……
…
歌「ありがとう。もう十分聞けたよ。これから頑張る」
女友「ってことはやっぱり…」
歌「うん。アタックし続けてほんとに好きになってもらう」
女友「…………」
歌「だから今日の事はJKさんに内緒にしてほしい…頼む!」
女友「う、うん…わかった」
歌「ありがとう。助かったよ」
女友「(なんで私が…お礼されるなんて…)」
……
…
女友「はぁ…」
女友「(いろいろ神経すり減って寿命縮んだかも…)」
女友「(正直もっと、なよなよしてる気がしてたんだけど)」
女友「(……告白が月曜日で今日が木曜日)」
女友「(男子三日会わざれば……ってやつ?)」
帰宅路
歌「(罰ゲームの首謀者当ては成功したけど)」
歌「(成功したけど…)」
歌「…………」
歌「(言われて傷つくってことは、まだどっかで信じてたんだ…)」
歌「(どう考えたって罰ゲームに決まってるのに…)」
……
…
歌「(遊園地)」
歌「(水族館)」
歌「(プラネタリウム)」
歌「(料理は、イタリアン)」
歌「(夜景より、海)」
歌「(花火…)」
夜 歌麿宅
妹「うまくいった?」
歌「たぶん」
妹「そっか。脅さなくても大丈夫だったんだ」
歌「下から攻めた」
妹「口が回ったみたいでよかったよ」
歌「中身を妹と思え作戦は万能だ」
妹「……でもキツいのはこれからだよ兄さん」
歌「そうだな」
妹「女さんは惚れられてることを知らなくて、期間は2週間、デートは5回」
歌「来週の日曜までだな」
歌「あと、アドレスも聞けた」
妹「おっけー。んで、この条件はどっちかクリアで終わりなのかな」
歌「いや、どっちもクリアするのが条件だってさ」
妹「……性格も考慮すると、焦らしもいけるかも」
歌「?」
妹「前のデートは上手くいったみたいだから次もこの調子でいかないとね」
歌「ちょっとくらいは意識してくれてるかな」
妹「好印象なんて100%ない。今の段階だと良くてプラマイゼロくらい」
歌「それ相当まずいんじゃ」
妹「そんなことない。罰ゲームの初デート終わりに負の感情がないなんて普通ありえない」
歌「まぁたしかに…」
妹「(聞いてると女さんの性格は変なところで真面目みたい)」
妹「(言われた事はやり遂げる仕事人みたいなタイプね)」
妹「(罰ゲームを途中で投げ出さない……くらいの真面目さなら歓迎だけど)」
妹「…………明日はとりあえず無難なとこから攻めるか」< /div>
歌「…………」
妹「どしたの?」
歌「今後のことなんだけど…」
翌日 放課後 (金)(7/3)
女「(帽子買ってもらうのはイヤだな)」
女「(変なところで借りなんて作りたくないし)」
女「(うーん…)」
女「(っていうか、今日は女友ちゃん何も聞いてこなかったなぁ)」
女「(…………もしかして、飽きたとか?)」
女「(そしたら反故にできるんじゃ…)」
女「(いやでも…)」
歌「なんか考え事?」
女「!」
女「びっくりした」
歌「そんなに?」
女「……ううん。はやく行こ」
歌「了解」
女「(他の人にあんまり見られたくないし)」
ショッピングモール デート 2回目
歌「結構混んでるな」スタスタ
女「金曜だからかなぁ」スタスタ
歌「そうかも」
女「(しかもカップルだらけ…)」
女「(手つなぎたいなんて言わなきゃいいけど)」
歌「あの帽子はどしたの?被ってないけど」
女「……あんまり人が多いとこでは被りたくなくて」
歌「もしかして」
女「何?エスパー?」
歌「……なんとなくだけど、ミーハーに見られたくないんだろーなって」
女「(すご…)」
歌「やっぱ外れてた?」
女「教えてあげない」
女「……機嫌は直ったけどね」
歌「キャップ女子の事まだ引きずってたのか」
女「まぁね。でも直ったから」
歌「それは助かった」
歌「俺も漫画とか好きだからミーハーに見られることあるんだよ」
女「そうなんだ」
歌「アニメ化とか実写化すると特に」
女「うーん…」
女「私はあんまり興味ないからわかんないけど」
女「女友ちゃんもそんな話してたような…」
歌「もしかして女友さんと趣味合うのかもしれない」
女「オススメしてくれた漫画なんだったかな」
女「……食戟の巨人だっけ」
……
…
女「あ、この店よく行くんだ」
女「私好みのが多くて困るくらい」
歌「選ぶの大変だな」
女「そそ」
歌「片っ端から被ってくか」
女「えぇ…恥ずかしいよ」
歌「そう言わずに」
女「……じゃあまずはこれを」
歌「似合う!かわいい!」
女「まだ被ってないんだけど」
歌「エスパーだから」
女「いやいや」
歌「可愛いから何でも似合うし」
女「……」
女「(……お世辞だよね?)」
……
…
女「よし、君に決めた」
歌「ん。かわいいな」
女「(全部褒めてたくせに…)」
店員「ありがとうございます。当店のメンバーズカードは…」
歌「女さん持ってる?」
女「うん。どこだったかな」ガサゴソ
歌「…………」スッ
女「あ、これこれ」
女「(ってもうお金置いてある!)」
歌「あ、ごめん。端数ないや。小銭ある?」
女「え、あ、うん」チャリン
店員「ありがとうございます」
……
…
女「お金、返すよ…?」
歌「俺が誘ったんだから払わせて」
女「うーん…」
歌「じゃあ今度なんか奢ってよ」
女「……わかった」
歌「今日は被んないの?」
女「これは明日以降のお楽しみ」
歌「それは残念」
女「……あ、もしかして」
女「あのスタバにいるのウチの学校の子じゃない?」
歌「ほんとだ。下級生かな」
女「そうかも」
歌「みんな勉強してるな」
女「そういや来週からテストだもんね…」
歌「やたら落ち込んでるけど」
女「勉強ほんと苦手なの」
歌「そうなんだ。初耳」
女「いやもう引くほどダメで」
歌「そんなに?」
女「とにかく引くよ」
歌「いやいや勉強できないくらいで引かないと思うよ」
女「いや引く」
歌「引かないって」
女「引く!」
歌「なにその自信」
女「…………」
歌「(……人は熱意で堕とす)」
歌「じゃあ……土日のどっちか勉強会しない?」
夜 女宅
女「勢いに押されてアドレスまで交換しちゃった」
女「テストの話なんかするんじゃなかったのかなぁ…」
ピリリリ
女「あ、メールだ」
歌『明日の集合は何時にしようか』
女「……深夜に観たいドラマがあるから明日は遅い方がいいんだけど」カチカチ
女『1時半がいいな』
ピリリリ
歌『了解。じゃあおやすみ』
女「(返信はやっ)」
女「おやすみ…?」
女「まだ8時なのに…」
女「もしかしてはやくメール切り上げたかった…とか?」
女「まぁいいや」
女「でも図書館って言ってくれてよかった」
女「家になんか行きたくないし」
女「連れてくるのもいやだし」
女「(たしか賢かったはずだから、ちゃんと教えてもらお)」
女「(無事にテスト乗り切れたらいいなぁ)」
女「…………」
女「…………」ガサゴソ
女「…………」ポスッ
女「うん。やっぱりこのキャップが一番かわいいや」
女「明日被っていこうかな」
女「(……でもちょっと恥ずかしいような)」
女「(買ってすぐ明日のデートで使うなんて…)」
女「(なんか張り切ってるみたいに思われる気もするし)」
女「…………」
女「うん。やめとこ」
つづく…
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